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【北の随草録】〜ヤドリギ



木々が葉を落とし、真っ白な雪と澄み切った空気に包まれる冬。


視線を上げると、樹冠にヤドリギが鳥の巣のような佇(たたず)まいで抱かれています。


ヤドリギは半寄生植物であり、大地に根を張ることができません。水分や養分を宿主である樹に依存していますが、自ら葉緑素を持ち、光合成で栄養の一部をまかないます。その実は粘着性があり、食べた鳥に運ばれ排泄された種がその粘着力によって樹にくっつき、そこに芽を出し、根を下ろします。そして、餌の乏しい冬には、鳥たちが集まる豊かな環境ともなるのです。



ヤドリギは、多くの生命たちがエネルギーを地中に潜めるこの季節に、瑞々しい生命の色を宙に浮かべ、宝石のような実をつけるその姿から、豊かさをもたらす神聖なものとして、様々な神話や文化の中に息づき、薬用としても深い歴史があり、今に続いています。



私たち人間も、大地に根を下ろすことができませんが、生態系と繋がることで生命を維持し、人の間に根差すことで強くなります。人とヤドリギとの関わりは、それを心に招き入れることで世界から愛を受け取る、祈りとしての歴史でもあったのかもしれません。















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